アトピー性皮膚炎で苦しみ、いろいろな病院で治療を受けてもよくならない、かえって悪化するばかりと悩む人のなかには、転地療養を思い立ち、実行する入も少なくありません。
とくに、小さな子供がアトピーで苦しんでいる場合は、親がすこしでも空気や水がきれいで、環境のいいところに行けば症状がよくなるのではと考え、海辺や山あいなどに引っ越すケースをよく聞きます。
それまで都会暮らしをしていた人が、子どもの病気のためとはいえ、田舎に越すとなればいろいろとたいへんなこともあるはずです。
とくに、収人をどうやって得るかが、大きな問題で、引っ越し先でなかなか仕事が見つからない場合には、父親だけは都会に残って、週末だけ家族とともに過ごすというケースもあるようです。家族にとっては大きな負担ですが、子供の苦しむ姿を見ていると「アトピーがよくなるなら、この子の苦しみが軽くなるなら」と思うのでしょう。
実際、転地療養によってアトピーの症状がよくなるケースは見られます。
都会に暮らしていた患者さんが空気のきれいな田舎で暮らすようになると、アトピーがよくなる理由として、ダイオキシンや排気ガス、煤煙などの有害物質にさらされなくなるためだといわれていますが、それはその通りでしょう。
しかし、それだけでなく、環境も生活習慣もすべてが変わることが効果を上げるのだといえます。
空気中に含まれている有害物質は、体のなかに侵人して毒としてたまってアトピーの原因になるとともに、発病のきっかけにもなる可能性のあるものです。
いつもそうした有害物質にさらされて暮らしていた患者さんが、きれいな空気のなかで暮らすようになれば、それだけで体のなかの毒が減っていきます。
また、きれいな水も大きな要素です。
都会の水道水には塩素をはじめ、いろいろな体にとって毒となる物質が含まれています。
最近では、飲み水には浄水器を使ったり、ミネラルウォーターを買ったりして、きれいでおいしい、安心な水を飲もうとしている人が増えてきました。
しかし、ほとんどの場合、風呂や洗濯に使う水は水道水です。
風呂にはいれば水道水に含まれる有害物質が直接皮膚に触れ、洗濯した洋服に残留した有害物質もやはり皮膚に触れます。
それらは、場合によっては体のなかに侵入する可能性もありますし、皮膚を刺激して症状を発生、悪化させる危険が高いのです。
水がきれいな場所であれば、水道水に含まれる有害物質も、当然少なくなります。
また田舎暮らしになると、食生活が変化します。ファーストフードやコンビニ食品を口にする機会はあまりなくなるはずです。
また、地元でとれた鮮度のいい食材がたくさんあるために、加工食品を使うことも減るでしょう。
こうしたことによって、いちばん体のなかに毒をためやすい食事が大きく変わり、体内の毒が減っていきます。
さらには、時間に追われるような都会から、のんびりした田舎での暮らしに変わることで、精神的にもストレスが軽減されます。
これは大人ばかりでなく、小さな子どもにもいえることです。
まえにも触れたように、都会で暮らしているということは、毒に囲まれているようなものであり、毒が日々たまっているといっても過言ではありません。
アトピーの因子を持っている人であれば、発病してもあたりまえの環境です。
それが空気も水もきれいな場所で生活するようになり、食事も変われば、体のなかにはいってくる毒はずっと減りますから、体のなかの毒はすこしずつ減っていきます。
新陳代謝の活発な子供なら、毒が減るのも早いはずです。
見逃せないのは、転地療養をするのは、病院での治療に失望し、不信感を持った場合が多く、薬の使用をやめることが少なくないことです。
ステロイド剤などの化学薬品を使わなくなることも、アトピーがよくなる大きな理由です。
もし、転地療養によってアトピーを治したいと考えるのであれば、病院での治療、化学薬品の使用は絶対にやめなければなりません。
化学薬品を使い続けるのであれば、転地療養をしても意味がないのです。
ステロイド剤をやめれば、リバウンドが起こって一時的に症状がひどくなりますが、都会暮らしを続けている場合よりもリバウンドも軽くてすむでしょうから、我慢して、また使いはじめることのないようにしなければなりません。
それが転地療養を成功させるための絶対の条件です。